小説

少年裸祭り 【四拾壱】

鈴谷 孝輔
  • 鈴谷 孝輔
  • 2009/01/03 10:19
  • ある民家 玄関口
全員の厄付けと神主さんの健康祈願が終わって 今俺たちは玄関口にいる。 西島と山井と3人で肩を組んで 海に繰り出していく準備は万端だ。 いろいろあったけどさ。 考え出したら止まんなくなっちまうし 今はとりあえず邪念は消し去って 年男としての役を恥ないように全うしようと思う。 大丈夫、俺なら出来るさ。 「寒いだろうけど、頑張ろうな!」 ここまで一緒に頑張っていた戦友2人に声をかける。 「おう。」 「ほーい。」 はは、西島も山井も相変わらずだ。 でもなんだかんだで俺ら3人って いいコンビな気がするんだよな。 俺だけが思ってたら悲しいから 口に出しては言わないけど …うん、この2人が一緒で良かった。 …とか、気を紛らわせたいだけかも知れないけど…。 「…よし、オッケイだな。  じゃあ、坊主どもー!出撃しろーい!!」 出撃って…。 まぁとにかく、その掛け声と共に玄関のドアが開き 俺ら12人は勢いよく飛び出していく。 やっぱ寒い… それが最初の感想だったけど 何より、さっき以上に観客の人たちの 歓声、熱気が凄かった。 こっちまでテンション上がっちゃいそうだ。 よし、このまま海まで一気に行くぞ! …と、言ってはみたものの やっぱりなんだかんだで間宮を探してしまってる俺。 …だってそりゃあ、気になるモンな。 …などと考えているのもつかの間 砂浜に下りていく階段の直前に 俺らのクラスの女子3人組がいた。 先生もいたな、そっか来てたんだな、ビデオ撮ってる。 なんか、こっぱずかしいな…。 …と、目を泳がせながらも 結局は間宮に視線は止まってしまった。 余計な心配する必要ないって言われたけどさ。 やっぱりその…気になっちまうよな。 その間宮は 顔を赤らめて俯いているように見えた。 やっぱり、ショックだったのかな。 …ふと間宮が目線を上げたかと思うと 一瞬だけ俺と目が合った…気がした… いや合った。 俺と目が合うと、目を丸くして顔をそらす間宮。 …まぁ当の俺もだけど。 …そりゃビックリしたよな…。 なんかやっぱり、申し訳ない。 …でも、いまそんなこと思ってても仕方ないしな。 なによりそんな邪念を持って祭りに臨んでたら 祭りの神様に失礼ってもんだよな。 よし。 俺はしっかりと顔を上げて 目の前に広がる海を見つめる。 ここからあと80mくらいか。 …寒いだろうな…でも、頑張ろう。 大きな歓声の中で響くのは 俺自身の心臓の鼓動。 このドキドキは、何から来るものなんだ…? それとも隣の西島のドキドキなのかもしれない。 …そんなの、考えたって分からない。 …今はただ 海を目指すのみだ。
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