小説

少年裸祭り 【伍】

西島 耕助
  • 西島 耕助
  • 2009/01/02 17:32
  • 西島家 トイレ
トイレの便座に座りながら、俺は呆然としていた。 さっき聞いた山井からの電話を頭の中で反芻する。 …なん、なんだって…? 褌を締めてくれるのが…間宮のお母さん? …意味が分からん… …なんで、なんでだよ、なんで女なんだよ! 普通に考えてそこは、最悪男の人にするべきだろーよ! 小学生だから、まだ子供だから、とかそんな考えなのか? 冗談じゃねーよ全く…。 …つまりは、間宮のお母さんに 俺のアソコ見せることになるってことか…。 マジかよー、めっちゃんこ恥ずかしいじゃんかよー…。 山井の奴は妙に電話でテンション高かったけどさぁ… なんなんだよなあいつは。 …変態なのか?あんな顔して実は。はぁ。 …しかも間宮のお母さんってことは… 間宮のお母さんが俺のちんこを見る→ 間宮のお母さんから間宮に 俺のちんこのことが話される→ 間宮は俺の小さいちんこを想像して笑う→ 間宮は学校でそのことを仲のいい友達に話す→ そこからは樹形図的にそのことは広まり…→ 俺に秘密は学校中に知れ渡る…  完。 …いやいや完じゃなくて! ……最悪だ。 我ながら最悪のシナリオだ。 つまりは間宮のお母さんに見られたら 俺のちんこが学校のやつら全員に 見られたようなモンだってことだろ? 俺の考え過ぎかも知れねぇけどさ…。 …ひでぇよー、新年早々酷すぎるよぉ…。 なんで俺がこんな目に遭わなきゃなんねぇんだよ、なぁ。 …でもとりあえず あーだこーだ言ってても仕方ないもんな。 きっともう確定事項だし。 ここは腹をくくって切り抜けるしかない…よな。 間宮のお母さんにちんこを見られること前提で その後のことについて考えないとな。 俺はトイレにしっかり鍵をかけたことを確認する。 そして立ち上がり、着ている服を脱いだ。 パンツ1枚になって便器と向き合う。…さみぃ。 明日の予行練習ってやつだ、便器が間宮のお母さん。 ガキとか言うなよ、俺にとっちゃあ一大事なんだ。 どうやって褌をつけてくれるかは良く分からないけど おそらく「全部脱いで。」って言われるんだろうな。 無機質な便器を人間に例えるのは難しいけど 頭の中で想像して、俺はゆっくりとパンツを脱ぐ。 …相変わらずちっせー…。 元々小さいのに寒さで更に縮こまるとか… ホント、良く出来てるよ。何がだって話だけど。 素っ裸姿のまま後ろに腕を組んで、便器の前で仁王立ち。 本番はどれくらいの時間見せるのかは分からないけど 多くても10秒だよな。 とりあえず10秒数えてみるか。 1,2,3,4… 5,6… 「耕助~?大丈夫?お腹壊したの?」 いきなりドア越しに声をかけられてビクッとする。 母さんだ。 寒さと驚きで体中に鳥肌が立つ。 見られてはいないけど、心拍数が上がる。 「…え、えぇ?な、なんで?」 素っ裸でいるなんて言ったら 息子がおかしくなったと思うだろうな。 それだけは気づかれないようにと俺はそう言う。 ドア越しに母さんと全裸で対峙する俺。 ドアがなかったら、とんだ親孝行だよな。なんてな。 …いや実際親不孝か、いろんな意味で。…うるせー。 「もう5分近くこもってるじゃない。  そりゃ心配するわよ。」 もう5分もいたのか俺。いろいろ考えてたからな。 しかもこのままだと、まだ出れそうにはない残念ながら。 「で、でかいだけだよ。気にすんなって。」 苦し紛れの言い訳。 「いやーねぇもう、汚い。ちゃんと流しなさいよ~!」 そう言って母親はドアの前から離れていった。 どこか嬉しそうに聞こえたのは、親、だからかな。なんて。 体中に冷や汗をかいてた。 これを嫌な汗って言うんだろうな。 本番明日なのに 前日にまで変な体験してどうすんだよな全く。 …ううぅ、寒くなってきた。服着るか。 …何やってんだかな、俺。 適当にトイレットペーパーを巻いて、破り、投げ捨て 水を大で流してトイレを出る。 「でかいだけ」ねぇ…一度でいいから言ってみてぇよ。 …情けねぇ。
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